高齢になると持病や疾患を抱えていて、それを抑えるために幾つもの薬を飲んでいる人も少なくありません。
薬によっては、飲まないと健康を大きく損ねてしまうため、どうしても飲んでいただきたいものもあります。
ですが、認知症の高齢者の中には、薬を飲む必要性が分からなかったり、薬を飲むことを嫌がったりする人もいらっしゃいます。
今回は、実際の介護現場で服薬拒否されずに服薬してもらえている具体的な方法を紹介いたします。
服薬の重要性
服薬を拒否する入居者様の意思を抑えてまで服薬させることがどの程度必要であるか、重要であるかの正解は一つとは限らない複雑な問題だと思います。
現実問題として、服薬介助は介護において重要な業務の一つです。
なぜならば、ご高齢になると何かしらの体の不調を訴えられたり、疾患をお持ちだったりする方がほとんどだからです。
そして、その有効な解決策の一つが服薬だからです。

仮に薬を間違えたり、床に落とした事に気付かなかったなどで服薬できなかった事が判明した場合は、事故扱いになります。
それくらい服薬介助は介護において重要な業務の一つです。
ですが、飲む薬を少しでも減らせるならばそれに越したことはないと思います。
とは言え、幾つもの薬が出されている理由は、薬の効果を十分に発揮させたり副作用を抑えたりするなど、お医者様が総合的に考えて処方して下さった薬の組合せだからです。
それらの薬を全てきちんと飲むことで最大の効果が得られるはずだからです。

ですが、私が勤めている施設には約40名の入居者様がいらっしゃって、一ヶ月当たり感覚的に1〜2件の落薬事故が起きているように感じますが、薬を一つぐらい飲み損ねたからと言って、それだけで健康が大きく損なわれる結果には至っていないというのも一つの現実です。
健康が大きく損なわれる結果には至っていないからと言って、上の事例が薬を飲まなくて構わないことの根拠にはなり得ません。
素人判断は禁物ですし、介護を提供する立場としては、処方された薬は全てきちんと飲んでいただくようにお手伝いすべきだと思います。
無理強いは禁物ですが、仮に嫌がったとしても上手になだめたり理解を求めたりしながら、更にはそもそも服薬拒否を起こさないように、上手に事を進めるのが望ましいと思います。
服薬拒否の原因や理由
認知症高齢者の服薬の難しさ
薬を飲んでいただくタイミングとしてよくあるのは食後です。
私が勤めている施設において、認知症の高齢者に食後に服薬を促した場合、素直に飲んで下さる方もいらっしゃいます。
ですが、お食事は普通に召し上がっていただけたとしても、なかなか服薬して下さらない方もいらっしゃいます。

例えばお薬を手に乗せて差し上げたとして、
- 服薬すること自体を認識できない。
- 服薬の必要性を理解できない。
- 「私はどこも悪くない」と言って拒否なさる。
- 服薬の重要性を認識できず、口に運ぼうとしない。
- 手に乗せた薬を捨ててしまう。
などということになったりもします。
あるいは、
- 薬を飲むことに不信感を持っている。
- 口に入れた薬を水で飲むことが上手にできない。
- 薬の味が苦手。
という方もいらっしゃいます。
このような場合の有効な方法について次でお話しいたします。
服薬拒否への一つの解決策
服薬ゼリーの活用
服薬を拒否する入居者様に服薬していただく一つの有効な方法は、服薬ゼリーの活用です。
服薬するということは伏せて、
- :「デザートのゼリーでございます。」と持ちかけ、
- :服薬ゼリーで包んだ薬をスプーンですくい、
- :口に持って行って差し上げ、
服薬していただきます。
なぜ服薬することを伏せるかと言うと、服薬することを嫌がる認知症高齢者に対して、服薬することのメリットや服薬しないことのデメリットを説明し、理解や納得を求めても無駄になる(ことがある)からです
失礼かもしれませんが、ご自身で正常に適切に判断する能力を失ってしまった認知症の高齢者に対しては、介護する側が適切に導いて差し上げるべきだと思います。
龍角散:らくらく服薬ゼリー
私が勤めている老人ホームでは、株式会社龍角散製の「らくらく服薬ゼリー(チアパック)」という商品を使っています。
らくらく服薬ゼリーとは
龍角散製のらくらく服薬ゼリーとは、薬の作用に影響を与えない成分で作られていて、服用しようとする薬をそれで包むことによって、のどに詰まらず楽に薬を飲み込むことを可能にする服薬専用のゼリーです。
らくらく服薬ゼリーには、次のような特徴があります。(出典:龍角散公式サイト)
- 薬をゼリーで包み込んで服用する服薬専用のゼリーです。
- のどにつまらず、むせずに、つるんと服薬できます。
- 複数の薬を一度に服用できます。
- 薬の作用や吸収に影響を与えません。
- ローカロリー、ノンシュガー、ノンカフェイン、アレルギー物質(特定原材料とそれに準ずるもの)不使用。果汁不使用。保存料不使用。
- カロリー制限や水分摂取制限のある方にもお使いいただけます。
- 唾液が出やすいレモン味です。
らくらく服薬ゼリーの使い方
私はらくらく服薬ゼリーを次のように使って服薬介助しています。
- :らくらく服薬ゼリー適量を小鉢などに出し、
- :そこに薬を乗せたら、
- :薬にゼリーを被せて薬をゼリーで包み、
- :その状態でスプーンですくい、
- :口に運びます。
ポイントは、
薬をゼリーで包むということです。
注意すべきことは、
決して混ぜるのではありません。
らくらく服薬ゼリーの特長
適用する薬という観点において、らくらく服薬ゼリーは薬の作用に影響を与えない成分で作られているため、どのような成分の薬にも、また、カプセルや錠剤や顆粒や粉末等のどのような形状の薬にも、更には同時に複数の薬を服用することにも使用できます。
服薬する人という観点において、らくらく服薬ゼリーはローカロリー、ノンシュガー、ノンカフェイン、アレルギー物質(特定原材料とそれに準ずるもの)不使用であるため、カロリー制限や水分摂取制限のある方にも使用できます。
つまり、極端に言うと、らくらく服薬ゼリーは誰にでもどんな薬にでも安心して使えるということです。
また、らくらく服薬ゼリーの持つ仕様や特徴からは、次のようなメリットが得られることを意味します。
- 薬とは言わず、デザートのゼリーだと言うことができる。
→見た目で薬だということに気付かれずに薬を口に入れることができる。 - レモン味。適度な流動性がある。
→唾液が出やすく飲み込みやすい。 - 薬がゼリーで包まれている。
→味で薬だということに気付かれる前に飲み込んでもらえる。
つまり、らくらく服薬ゼリーは服薬拒否に至る幾つもの要因を解消できる商品だということです。
また、認知症の有無や程度とは関係なく、嚥下(薬を飲み込む)機能が低下している人に対しても有効です。
らくらく服薬ゼリーに関するよくある質問とその答
龍角散製らくらく服薬ゼリーに関して浮かびそうな疑問とその答を 龍角散公式サイト から引用して以下に紹介いたします。
Q:薬の作用や吸収に影響はありませんか?
A:薬との相互作用がない成分を使用しております。薬の溶出や吸収を妨げないゼリーです。
Q:糖尿病と診断され、食事制限が厳しいのですが・・・
A:「らくらく服薬ゼリー」シリーズは、砂糖などの糖類は使用しておらずノンシュガー、ローカロリーです(栄養表示基準による)。また、インスリンの作用にも影響を与えない成分なので、摂取量(単位)の範囲内で管理していただければ、飲んでも問題ございません。
Q:お水は飲まなくてよいですか?
A:「らくらく服薬ゼリー」シリーズは、全成分の85%が水です。水のかわりに使用した場合、さらに水を飲む必要はありません。もちろん水を飲める方は飲んでも大丈夫です。
※一般的に医薬品が体内で吸収されるためには、コップ1杯程度の水分が必要とされています。
Q:アレルギー物質は含まれていますか?
A:アレルギー特定原材料(えび、かに、卵、乳、小麦、そば、落花生)とそれに準ずるものは含んでおりません。
Q:1回にどれくらい使えばいいですか?
A:使用される方の嚥下能力や服用する薬の数・量にもよるため一概には決まっておりません。目安として、一回にティースプーン一杯程度のゼリーの量をお使いいただき、適宜量を調整いただくことをお願いいたします。
Q:開栓したら、どれくらいもちますか?
A:開栓後は冷蔵庫に保存し、1週間以内に使い切るようにしてください。その際、吸い口は清潔にし、キャップはしっかり閉めて保存してください。スティックタイプは1回使い切りです。
Q:冷凍保存できますか?
A:冷凍保存はできません。未開封の製品は高温、直射日光を避けて保存してください。
Q:寝たままの姿勢で飲ませても大丈夫ですか?
A:寝たままの姿勢で薬を飲ませると、のどにつかえることがあります。らくらく服薬ゼリーは、薬がのどにつかえないよう、必ず上体を起こしてから飲ませてください。
らくらく服薬ゼリー(チアパック)の代替品
らくらく服薬ゼリー(スティックタイプ)
一回使い切りの分量が個包装に小分けされたタイプです。
メリットは、毎回新鮮な状態で使うことができ、保存や携帯にも便利なことです。
デメリットは割高なことです。
おくすり飲めたね スティックタイプ (チョコ風味)
抗生物質の服薬や苦い薬を嫌がる人に服薬してもらう場合に適したチョコ風味のゼリーです。
メリットは、らくらく服薬ゼリーと同様に薬の作用や吸収に影響を与えない上に、薬の味や匂いを感じにくくする効果に優れていることです。
デメリットは、開封後の保存が難しいために、チアパックは無く、割高なスティックタイプしか販売されていないことです。
メーカーは、開封後に保存することは想定しておらず、開封したら一回で使い切ってしまうことを推奨しています。
らくらく服薬ゼリーで、介助する側もされる側もどちらも楽々
服薬は適切に行なわれなければ健康状態に大きな影響が及びかねない重要な介助の一つです。
被介助者様が認知症だからと言って、本人任せにしていては済まされない場合もあります。
らくらく服薬ゼリーは、
- ローカロリー、ノンシュガー、ノンカフェイン、アレルギー物質(特定原材料とそれに準ずるもの)不使用。果汁不使用。保存料不使用。
- 薬の作用に影響を与えない成分で作られている。
- 複数の薬を一度に服用できる。
- のどに詰まらず楽に薬を飲み込むことを可能にする。
という特長を持ち、服薬が難しい人に介助する場合にも大いに助けとなってくれます。
あなたもこのらくらく服薬ゼリーを活用して、服薬介助が楽にできるようになり、被介助者様ともどもお元気でフラストレーションが少ない毎日を送られることを期待いたします。