車椅子に乗って自走して移動する人は、止まっている時や車椅子から立ち上がる時はブレーキを掛け、移動する時だけブレーキを解除するという基本を身に着ける必要があります。
なぜならば、移乗する時にブレーキが掛かっていないと立ち上がりの際に思いがけず車椅子が動いてしまい、座りそこなったり転倒したりしてケガをするリスクがあるからです。
そして、認知症の人ではそのリスクは更に高まります。
今回は、ブレーキを掛ける習慣を身に着ける見込みが無い程に認知症が進んでしまい、しかし、移乗できる程度の身体能力が残っている人が自力で安全に移乗する際の転倒防止対策に有効な自動ブレーキ車椅子を紹介いたします。
自動ブレーキ車椅子とは
自動ブレーキ車椅子とは、座面に重さが掛かっていない時、例えば、上に人が座っていない時や、上に座っている人が立ち上がろうとして座面に重さが掛からなくなった時に、自動的にブレーキが掛かる機能が付加されている車椅子のことです。
その一方で、上に人が座る(座面に重さが加わる)とブレーキが解除されて普通に移動することができます。
なので、車椅子に座っている人がブレーキを掛け忘れたまま車椅子から立ち上がろうとしても、自動でブレーキが掛かるため、車椅子がむやみに動いてしまうことはありません。
また、ブレーキが掛かっていない状態の車椅子に座ろうとして車椅子につかまったら車椅子が不意に動いてしまい、体を支えることができず転倒してしまうことも防げます。
そして、自動ブレーキ機能を作動させるか作動させないかを切り替えることもできるため、上に人が座っていない場合でも、自動ブレーキ機能を作動させないことで車椅子を持ち上げずに運ぶことも可能です。

自動ブレーキ車椅子の必要性を検討すべき段階とは
- 車椅子とベッド等との間を自力で移乗できる。
- 車椅子から立ち上がる前に自発的にブレーキを掛けない。
- 車椅子にブレーキを掛けることを習慣化できない。
この様な段階の人には自動ブレーキ車椅子の活用が有効かもしれません。
なぜならば、自力で移乗できるだけの身体能力がまだ残っているため、介助者が近くにいない時に、介助者の手を借りることなく、移乗することを自発的に試みる人だからです。
ですが、普通の車椅子であるならば、その車椅子にはブレーキは掛かっていません。
であるならば、車椅子が思いがけず動いてしまう危険性が大いに有るからです。
若い頃から足が不自由になってしまった人であれば、頭がまだしっかりしているうちから車椅子生活が始まるため、ブレーキを掛ける事を習慣化するのは比較的容易です。
ですが、車椅子に乗らないと移動が難しくなってしまったお年寄りは、脚の筋力が低下しているのみならず、認知症も始まっている場合が多くあります。
認知症の人の特質として、
- 今聞いたことが頭に入らない。
- 今聞いたことを覚え続けられない。
- 以前は出来たことが今はできなくなる。
- 新しいスキルを身に着けられない。
といった傾向が見られます。
そうなってしまった人に対しては、今更「ブレーキを掛けて下さい。」と、どれだけ口を酸っぱくして繰り返し教えても無駄です。
ブレーキを掛ける必要がある時に「ブレーキを掛けて下さい。」とお願いすれば、その時だけは実行して下さるかもしれません。
でも、ブレーキを掛ける必要がある時に「何をすべきですか。」と尋ねても、答を返して下さいませんし、尋ねられたことがヒントになってやるべきことに気付いて実行して下さることもありません。
その様な段階の人に対しては、自動ブレーキ車椅子が有効です。
自動ブレーキ車椅子を活用するメリットとデメリット
自動ブレーキ車椅子を活用するメリットとしては、以下のことが考えられます。
- 使用者の転倒リスクの軽減
- 介護者の不安の軽減
先にもお話しした通り、自動ブレーキ車椅子はブレーキを掛け忘れてもむやみに動かず、使用者を支えてくれます。
なので、使用者が転倒するリスクも軽減してくれますし、介護者の不安も軽減してくれます。
一方、自動ブレーキ車椅子を活用するデメリットとしては、以下のことが考えられます。
- 値段が高い
- 掃除やメンテナンスの負担が増える
自動ブレーキ機能が付いている車椅子は、付いていない車椅子に比べると、必然的に値段が高くなってしまいます。
また、自動ブレーキ部分の掃除をするのが面倒だとの声も聞かれます。
ですが、転倒防止や安全・安心には代えられないと思います。
自動ブレーキ車椅子で安心&安全
車椅子から離れる時にブレーキを掛ける習慣を身に着けられない程の認知症で、しかし自力で移乗できる程度の身体能力が残っている人には、転倒防止対策として自動ブレーキ車椅子が有効です。
使用する人も介護する人もどちらも安心できて安全性が高い自動ブレーキ車椅子をどうぞ有効にご活用下さい。