車椅子からベッドやトイレ等へ、逆にベッドやトイレ等から車椅子へ移乗する際は、車椅子にブレーキを掛けるのが基本です。
ですが、車椅子を使わないと生活が難しいくらいに脚が衰えてしまったお年寄りは、脚だけでなく、認知機能も衰えてしまっていることは珍しくありません。
今回は、車椅子と他の何かとの間を移乗する能力や車椅子で自走する能力は残っているが、車椅子の適切な使い方を習得することまではできないお年寄りに関する話です。
自動ブレーキ車椅子の利点
その様なお年寄りの中には、「移乗する際は車椅子にブレーキをかけねばならない」ことを、どれだけ頻繁に教えても覚えて下さらない人もいらっしゃいます。
そして、下手をすると、移乗し損ねて転倒・転落事故を繰り返しかねません。
それを避けるためには、使っている車椅子を自動ブレーキ車椅子に変更することも一つの有効な手段です。
なぜならば、自動ブレーキ車椅子とは、座っている人が立ち上がろうとして座面に体重が掛からなくなった瞬間にブレーキが掛かり、車椅子はその場所に停止してくれる機能が備わっているからです。
また、他から車椅子に移乗する時は、座面に体重がかかる瞬間までブレーキが効いた状態が続くため、車椅子につかまっても不意に動いてしまうことが起こりにくいからです。
その一方で、自動ブレーキ車椅子は、座る人の体重が座面に掛かっている時はブレーキが解除された状態になるため、楽に動かすことができます。
自動ブレーキ車椅子の使い勝手
自動ブレーキ車椅子とはこの様な機構が付加されているため、そうではない車椅子よりも重いです。
重いために、人が座っていない状態で動かそうとしてもなかなか動きません。
例えば、車椅子でトイレに行き、トイレに座り直そうとしたところ、トイレに近付き過ぎたために車椅子が邪魔でトイレに座れない、しかし、車椅子が重くてブレーキが掛かっているためになかなか動かせないということも起こります。
また、例えば、車椅子から他の何かに移乗する場合と、他の何かから車椅子に移乗する場合とでは、左右逆の動作を行なうことになります。
他の何かから車椅子に移乗する際、自分が楽に動ける位置に車椅子を動かそうとしても、車椅子が重くてブレーキが掛かっているためになかなか動かすことができません。
車椅子がじっとしていて欲しい時に不意に動かなくするためには、自動ブレーキ車椅子はとてもありがたい仕様です。
ですが、他の何かから車椅子に移乗する際に、楽に移乗できる位置に車椅子を容易に動かせないという難点も同時に存在します。
自動ブレーキ車椅子の是非
この様な実情を踏まえて、自動ブレーキ車椅子を使うことと、自動ブレーキ機構が付加されていない普通の車椅子を使うことでは、どちらが得策でしょうか?
使い勝手において一長一短あるものの、転倒事故は減りました。
であるならば、自動ブレーキ車椅子は大いに有効だと考えられます。
車椅子にブレーキを掛けるという習慣を身に着けることができず、転倒・転落事故を頻繁に繰り返しているお年寄りに対しては、自動ブレーキ車椅子への変更を検討してみてはいかがでしょうか。