認知症の多少にかかわらず、入浴を嫌がる入居者様もいらっしゃいます。
ご本人の希望に沿っていては、一生お風呂に入らなさそうなくらい、強く入浴拒否なさる入居者様もいらっしゃいます。
その様な高齢者をどの様にして入浴介助したかの対応方法を実例に基づき紹介いたします。
被介助者様の実情
実はその入居者様は、入浴すること自体はむしろお好きです。
湯船に入るととても気持ちよさそうに、また嬉しそうにされ、なかなか出て下さらないほどです。
ですが、「お風呂」という言葉は禁句です。
お風呂にまつわる昔の嫌な思い出が記憶に残っていることが理由で拒否なさるみたいです。
「今から〇〇様がお風呂に入るお手伝いをさせていただきます。よろしいでしょうか?」と同意を求めても、断られます。
そして、正攻法で、入浴する必要性およびメリットや入浴しないことの弊害を言葉でどれだけ説明して説得して入浴を促しても、認知症も手伝って逆効果です。
死んだふりまでして、てこでも動かないぞという意気込みで断固拒否なさいます。
介助方法
ではどうしたかと言うと、
- おむつ交換することを伝えます。
- 浴室まで移動していただきます。
- おむつを含めて下衣を脱いでいただきます。
- 上衣も脱いでいただきます。
- 一旦、入浴していただきます。
- 入浴後に新しいおむつを身に着けていただきます。
- 新しい下衣と上衣も着ていただきます。
本質的にも費やす時間も入浴がメインですが、おむつ交換を前面に出して、入浴は付け足しのように装う訳です。
言い換えると、やることはおむつ交換、やる場所は浴室、そして、新しいおむつを身に着けていただく前に入浴することを割り込ませ、合わせて着替えもしていただくのです。
日頃から毎日同じ時刻におむつ交換の介助をして、その時間帯におむつ交換をするのが常だと思ってもらえるように土台作りをしておくことも重要だと思います。
結果
浴室まで来ていただき、服を脱いでしまえば、拒否されません。
この入居者様に対しては、そこまでが、介助する側の腕の見せ所とも言えます。
言い換えると、「お風呂」という言葉に紐づく嫌な記憶を思い出させずにお風呂に入る流れに持って行くことが知恵の絞り所だと思います。
決して嘘はついていません。
嫌な記憶を思い出させない様に最大限に気遣っているのです。
湯加減を確認していただいたら、後は入浴が進む方向へと進行していきます。
入浴すること自体はむしろお好きな方なので、一旦湯船に入ってしまうと、次は出ていただくことに苦労しかねないほどの人です。
入浴することに対して何の不満も無さそうです。
教訓
この事例では、今から入浴することを伝えること無く入浴させたと解釈すると、教科書的には間違いになるかもしれません。
ですが、仮に、今からすることは「お風呂に入るのではありません。」と否定表現で伝えても、「お風呂」という言葉が含まれていると否定にはなりません。
「お風呂」という禁句を使わずに事を進めるのが重要だと思います。
- 拒否の要因を経由しない事の進め方をする
- 結果としても満足していただいている
これらが満たされる道を探り実施することが成功への鍵ではないでしょうか。