移乗介助、その中でも被介助者様が寝たままの体勢で移乗せねばならない場合は、介助者に大きな負担がかかります。
そんな時、スライディングボード(フレックスボード)を活用することによって、負担を軽減できます。
居室のベッドや入浴用のストレッチャーとリクライニング車椅子との間の移乗を、楽に安全に行なうことができます。
今回は、このスライディングボードの使い方を紹介いたします。
被介助者様の現状
脚からお腹にかけて水が溜まってしまっている(むくんでいる)入居者様がいらっしゃいます。
お腹の状態を例えて言うと、妊娠10ヶ月の今にも赤ちゃんが生まれそうなくらいに膨らんだ状態です。
そのため、上半身を起こした体勢(座位)を長時間保つのが難しいです。
例えば、指をケガして腫れてしまった時は指を曲げづらくなりませんか。
その状態がお腹で起こっていて、腰が曲げづらい状態の人です。
なので、残念ながら、トイレに座る体勢になることも難しいです。
おそらく、トイレに自力で歩いて行くだけの脚力も残っていないでしょう。
ですから、この方は、基本、一日中ベッドの上で過ごす、という状態の人です。
スライディングボードを活用する場面
この方は、基本的に、一日中ベッドの上で過ごしていらっしゃいます。
ですが、このような人でも、唯一、ベッドから離れる時があります。
その時とは、入浴介助する時です。
お風呂場への移動は、「リクライニング車椅子」と言って、寝た体勢になれる程に背もたれを後ろに倒すことができる車椅子に乗って移動します。
このリクライニング車椅子と、居室のベッドあるいは入浴用のストレッチャーとの間を移乗する際に、スライディングボードを活用します。
具体的には、寝たままの体勢で、二人介助で、スライディングボードを活用してゆっくり滑らせる、という方法で移乗しています。
スライディングボードを活用する利点
スライディングボードを活用することによって次のような利点が得られます。
- ボードが移乗する間の橋渡しになる
- 滑らせやすいので少ない力で移乗できる
- 介助する側も楽
- 介助される側も楽
- 抱きかかえたり持ち上げたりせずに移乗できる
自力では移動できない人をボードが支えて橋渡ししてくれます。
抱きかかえたり持ち上げたりせずに済み、滑らせれば良いので、介助する側の負担が軽減されます。
介助する側のみならず介助される側も楽です。
スライディングボードの特徴および使い方
これまで、単に「スライディングボード」と言ってきましたが、「フレックスボード」と呼ばれることもあるようで、実は、次のような特徴があります。
- 短いボード数枚が縦に屏風のようにつながっていて折り曲げ可能
- ボードの周りに滑りの良いロール状のシートが巻かれている

このボードの上に被介助者様を乗せ、居室のベッドあるいは入浴用のストレッチャーとリクライニング車椅子との間を滑らせて移乗します。
移乗する過程においては、実は、ボードを滑らせる場面も被介助者を滑らせる場面もどちらもあります。
ボードの特徴も移乗する過程も、言葉で説明しても理解できないと思いますので、次の動画を参考にして下さい。
残念ながら私が勤めている施設において撮影された動画ではありません。
被介助者様の感想
移乗の時どうだったかを被介助者様に尋ねてみました。
被介助者様にとって初めての体験だったそうで、比較の対象が無いため答えづらかったみたいです。
ですが、特に不満には感じなかったみたいです。
それよりも、その被介助者様はお風呂がお好きな方で、でも介護保険の関係もありお風呂に毎日のように入ることはできないため、貴重な入浴の時間を大いに満喫なさったご様子で、「お風呂最高!!」とまで言って下さいました。
なので、合格点と解釈しています。
スライディングボードの紹介
実際に使っているスライディングボードは「master care」という名前のデンマークの会社の製品でした。
入手方法はよくわかりませんでした(スミマセン)。
類似品を探してみました。
ラックヘルスケアというブランドのフレックスボード 39580030という商品が良さそうです。
スライディングボードを活用して、楽に安全に移乗介助
今回取り上げたスライディングボードを活用する必要がある人は、重度の要介護者のはずです。
介護される側もお辛いでしょうが、介護する側も大変だと思います。
今回紹介した方法で、寝たままの体勢でもベッドとリクライニング車椅子の間等の移乗を安全に楽にできることをお祈りいたします。